結論: イギリスのSIM選びで効くのは、売り場でも料金でもなく「どの回線に載るブランドか」と「自分の端末が4Gで通話できるか」の2点です。イギリスの3G網はすでに全社が停波を完了しています。とくにThreeは2G網を持たないため、4G非対応の端末では通話もSMSもデータも一切できません。そして、格安ブランドがどの回線に載るかはOfcom(通信庁)が名指しで公表しています。
端末の条件を出発前に確かめておきたいなら、日本にいるうちに設定できるeSIMという選択肢があります。Coral eSIMのイギリスプランから滞在日数に合う容量を選べます。
イギリスの3Gはすでに全て止まっている
いま動いているのは2G・4G・5Gの3世代
Ofcomの現行の案内は、はっきりこう書いています。「3G mobile networks are now switched off.」(3G網は現在停波済み)。そのうえで「イギリスの移動体サービスが現在使っているのは2G・4G・5Gという3つの世代」と整理しています。
日本語の記事の多くは「イギリスは4G・5Gが中心だが3Gも残っている」という前提で書かれていますが、3Gはもう選択肢として存在しません。手持ちの端末が4Gに対応していない場合、それは「遅くなる」ではなく「つながらない」を意味します。
Threeを選ぶと、古い端末は完全に使えない
ここが最も見落とされている点です。Ofcomは事業者ごとに状況が違うと明記しています。
- EE・Vodafone・O2: 古い端末でも2Gで通話とSMSは引き続き可能。ただし2Gはデータ通信用に設計されていないため、3G停波後はモバイルデータはほとんど使えない
- Three: 2G網をそもそも持っていない。4G・5Gに対応していない端末では、通話・SMS・データのすべてが不可。端末を買い替える以外にない
つまり同じ「イギリスのSIM」でも、Threeの回線を選んだ瞬間に端末の要件が跳ね上がります。店頭やオンラインで安いプランを選んだ結果、それがThree系だった場合、古い端末は文字どおり沈黙します。
4G対応でも設定の更新が要ることがある
Ofcomは、4G端末についても注意を付けています。「一部の4G端末は、発信した通話を正しい網に載せるために、ソフトウェアまたは設定の更新が必要な場合がある」。これは通話を4G網で扱う仕組み(VoLTE)のことです。
データ通信は問題なく動くのに通話だけができない、という状態はここで起きます。数年前に買った端末を旅行用のサブ機として持っていく場合は、出発前に確認しておく価値があります。手順は古いiPhoneでeSIMを使う場合の条件とeSIM対応端末の確認方法にまとめています。SIMロックの確認はこちらです。
端末側の条件を日本にいるうちに片付けてしまいたい場合は、Coral eSIMのイギリスプランが使えます。設定手順は旅行用eSIMの設定方法のとおりです。
2G網も順に止まる。日程は政府が公表している
2Gで通話とSMSが残っているのは一時的な状態です。全事業者が2033年までに2Gを停波すると政府に確約しており、個社の日程はすでに公表されています。
| 事業者 | 2G停波の予定 |
|---|---|
| EE | 2029年5月から全国的に退役(2025年10月に発表) |
| Virgin Media O2 | 2029年夏から開始 |
| VodafoneThree(Vodafone網) | 2030年春 |
| Three | もともと2G網を持たない |
| 全社共通 | 遅くとも2033年まで |
2026年3月には、政府が移行を円滑にするための任意の「2G switch-off charter」も公表しています。数年先の話ではありますが、いま古い端末で「まだ通話はできる」状態にある人にとっては、期限のついた猶予だという理解が要ります。
どのブランドがどの回線に載るかはOfcomが公表している
当局が名指しで対応関係を書いている
イギリスで旅行者が勧められるのは、大手そのものではなく格安ブランドであることがほとんどです。そしてどのブランドがどの回線を使っているかを、Ofcomが公式に一覧で示しています(2026年8月10日更新時点)。
| 回線 | その回線を使うブランド |
|---|---|
| EE | Your Co-op / 1p Mobile / Utility Warehouse / Ecotalk / Lycamobile / BT Mobile |
| Vodafone | Lebara Mobile / Asda Mobile / Talk Mobile / VOXI |
| O2 | Tesco Mobile / Giffgaff / Sky Mobile |
Ofcomは「これらのブランドの2G停波の時期は、使っている回線と同じになる」とも書いています。ブランドを選ぶことは、実質的に回線を選ぶことです。
「4社から選ぶ」という前提はもう古い
日本語記事の多くは「EE・Vodafone・O2・Threeの4社」という枠組みで書かれていますが、VodafoneとThreeは統合してVodafoneThreeになっています。GOV.UKの公表資料はすでに「VodafoneThree」という表記を使っており、Ofcomも脚注で「VodafoneとThreeは別々のデータセットを提出しており、両網が完全に統合されるまでは別々に報告を続ける」と説明しています。
実務上は網としてはまだ2つ、事業者としては1つという過渡期です。プランを比較するときは、社名ではなく上の表でどの網に載るかを見るほうが確実です。
都市を出ると、回線選びが体感を分ける
Ofcomは各社から提出された信号強度の予測をもとに、カバレッジを定期的に公表しています。2026年1月時点のスナップショットは次のとおりです。
- 全事業者から良好な4Gが得られる国土面積: 84%(前回から3ポイント上昇)
- いずれか1社からの4G: 96%
- 建物の外での各社のカバー率: いずれも99%以上
- 5G(全体)は各社76%〜94%、全社から得られるのは64%
- 5Gスタンドアロンは展開済みの3社で49%〜85%
84%と96%の差が、そのまま「回線選びが効く領域」です。ロンドンやマンチェスターの市街地にいる限り、どのブランドでもほとんど差は出ません。差が出るのはスコットランド高地、ウェールズ、コーンウォールなどの地方部です。鉄道やレンタカーで地方を回る旅程なら、ブランド名ではなく載っている網で選ぶ意味があります。
Ofcomは郵便番号を入れて事業者別のカバレッジを調べられるチェッカーを提供しています。宿や訪問先の郵便番号が決まっているなら、出発前に確認できます。速度が出ないときの切り分けは通信が遅いときの確認手順を参照してください。
イギリスのSIMはEU域内で自動的に無料にはならない
もう一つ、旅程に直結する違いがあります。EUの「roam like at home」はEU域内の制度であり、イギリスはEU加盟国ではありません。
欧州委員会の案内によれば、EU域内では追加料金なしで国内料金が適用され、公正利用方針にもとづくデータ上限は2025年で1GBあたり1.30ユーロ+VAT、2027年以降は1ユーロ+VATと定められています。プリペイドでも、残高を1.30ユーロで割った容量以上のローミングデータが保証されます。この保護はEU加盟国のSIMに付くものです。
Ofcom側の案内も、EU域内を特別扱いしていません。「携帯電話会社は自社のローミング料金をウェブサイトに公表しなければならない」という整理で、料金そのものは事業者が決めるものとされています。
したがってイギリスと大陸ヨーロッパをまたぐ旅程では、イギリスのSIMを買っても大陸側の条件は個別に確認が要ります。逆にイタリアなどEU加盟国で買ったSIMは域内をまたいで使えます(イタリアで現地SIMを買う方法で扱っています)。ローミング全般との比較は国際ローミングとeSIMの比較にあります。
なお、Ofcom自身が渡航者向けの節約策として「訪問先の国のSIMカード、または『eSIM』の購入を検討するとよい」と明記しています。当局の立場としても、現地調達は妥当な選択肢という整理です。
FAQ
イギリスで3Gはまだ使えますか?
使えません。Ofcomは「3G mobile networks are now switched off.」と明記しており、イギリスの移動体サービスが現在使っているのは2G・4G・5Gの3世代だと整理しています。4Gに対応していない端末は、3G経由でのデータ通信ができなくなっています。
古いスマートフォンをイギリスに持っていっても使えますか?
回線によって結果が変わります。EE・Vodafone・O2では2Gで通話とSMSは可能ですが、2Gはデータ通信用に設計されていないため、モバイルデータはほとんど使えません。Threeは2G網を持たないため、4G・5Gに対応していない端末では通話・SMS・データのすべてができません。また4G対応端末でも、通話を正しい網に載せるために設定やソフトウェアの更新が必要な場合があるとOfcomは案内しています。
giffgaffやLycamobileはどの回線を使っていますか?
Ofcomが公表している対応関係では、Giffgaff・Tesco Mobile・Sky Mobile はO2網、Lycamobile・BT Mobile・1p Mobile・Utility Warehouse・Your Co-op・Ecotalk はEE網、Lebara Mobile・Asda Mobile・Talk Mobile・VOXI はVodafone網です。これらのブランドの2G停波の時期は、使っている回線と同じになるとされています。この一覧は更新されるため、購入前に最新の掲載内容を確認してください。
イギリスではEE・Vodafone・O2・Threeの4社から選ぶのですか?
その枠組みは現在では正確ではありません。VodafoneとThreeは統合してVodafoneThreeになっています。GOV.UKの公表資料はVodafoneThreeという表記を使っており、Ofcomは両社が別々のデータセットを提出しているため、網が完全に統合されるまでは別々に報告を続けると注記しています。網としては過渡期にあるため、社名ではなくどの網に載るかで比較するほうが確実です。
イギリスで買ったSIMはフランスやイタリアでも使えますか?
自動的に無料になるわけではありません。EUの「roam like at home」はEU域内の制度で、イギリスはEU加盟国ではないため対象に含まれません。Ofcomの案内もEU域内を特別扱いしておらず、ローミング料金は各事業者が定めて公表するものとされています。イギリスと大陸ヨーロッパをまたぐ旅程では、大陸側の条件を個別に確認してください。
イギリスのSIMは、ブランド名ではなく「載る網」と「端末の世代」で選ぶ
イギリスの現地SIMをめぐる日本語の情報は、いまも「4社のうちどれが安いか」「空港のどこで買えるか」という2020年前後の枠組みのまま止まっています。しかし一次情報を読むと、この数年で前提が2つ変わっていることがわかります。3Gは全社が停波を完了し、VodafoneとThreeは統合されました。どちらも当局と政府が公表している事実です。
その結果、選ぶときに見るべき順序も変わりました。まず自分の端末が4Gで通話までできるか。次にそのブランドがどの網に載るか。地方を回るならその網のカバレッジ。料金の比較はその後です。とくにThree系を選ぶ場合、端末の要件が他社より厳しくなる点は、店頭では説明されません。
端末の条件を出発前に確定させ、到着した瞬間から地図と予約確認を使いたいなら、日本で設定を終えられる方法が噛み合います。Coral eSIMのイギリスプランは出発前に設定でき、到着後は機内モードを解除するだけです。他の渡航先も含めて選ぶ場合はプラン一覧から比較してください。つながらないときの対処は到着後につながらない場合の手順とAPN設定の確認にまとめています。
