結論: カナダの現地SIMは、価格より先にどのブランドを選び、どの州で契約するかを決めるものです。理由は3つあります。カナダは5Gが人口の94%を覆っていますが、旅行者が買えるプリペイドブランドは4G LTE止まりです。CRTCの無線コードはプリペイドには一部の条項しか適用されず、請求額の上限は効きません。そして契約時に選ぶ州が、市外局番と税額と911レビーを決めます。

到着した瞬間から通信を確保したいなら、日本にいるうちに入れておけるeSIMという選択肢もあります。Coral eSIMのカナダプランから滞在日数に合う容量を選べます。

カナダのSIMカードは「回線3社」と「傘下のプリペイドブランド」に分かれる

回線を持っているのは実質3社

CRTC(カナダ放送通信委員会)の市場レポートによると、上位3社が国内の携帯市場の90%を占めています(2024年時点)。Rogers・Bell・Telusの3社です。サスカチュワン州では州営のSaskTelを加えた集中構造、準州ではBellがほぼ唯一の選択肢という地域差もあります。

ただし旅行者が店頭で目にするブランド名は、この3社名とは限りません。カナダの携帯市場は「回線を持つ3社」と「その傘下で価格帯を分けたブランド」の二層構造になっており、プリペイドは主に後者が扱っているからです。

Rogersのプリペイドは2025年2月20日にchatrへ移った

ここが日本語の記事でほぼ更新されていない点です。Rogersの公式ページには「2025年2月20日をもって、Rogersのお客様はプリペイドサービスをchatr経由で契約することになります」と明記されています。つまり「Rogersのプリペイド」という商品は、もう窓口としては存在しません。chatrはRogersの網を使うブランドで、公式には与信審査なし・契約期間なし・全国4Gカバーと説明されています。

「大手キャリアの店舗に行けばプリペイドが買える」という前提で旅程を組むと、案内される先が変わっている可能性があります。ブランド名で調べてから行くほうが確実です。

Bell系はLucky Mobileで、旅行者向けeSIMを用意している

Bell系のプリペイドブランドはLucky Mobileです。こちらは「Tourist eSIM」という旅行者向けの入口を公式に用意している点が特徴で、サイトは英語・フランス語に加えて簡体字と繁体字にも対応しています。与信審査なし・長期契約なし・データ超過料金なしと案内されています。

Telusも回線を持つ3社の1つですが、同社系のプリペイドブランドについては公式サイトから条件を確認できなかったため、本記事では条件を書きません。店頭やオンラインで比較する際は、その回線がどの3社の網に載っているのかを必ず確認してください。

カナダのプリペイドSIMは5Gにつながらない

国全体の数字と、旅行者が買える回線の数字は別

CRTCの市場レポートは、2024年時点で5Gがカナダの人口の94%に提供されているとしています。この数字だけを見ると、現地SIMを買えば5Gが使えるように読めます。

しかし旅行者が実際に買えるプリペイドブランドの公式表記はそうなっていません。chatrは「Fast 4G data」「nation-wide 4G coverage」、Lucky Mobileは全プラン共通で「4G LTE speeds」と明記しています。5Gの人口カバー率94%は、プリペイドを買う旅行者の購入判断には効きません。5Gが必要な用途があるなら、プリペイド以外の手段を検討することになります。

データを使い切った後の挙動も公表されている

Lucky Mobileは、プラン内のデータを使い切ると最大128kbpsまで減速すると公式に記載しています。止まるのではなく、極端に遅い状態で使い続けられる形式です。chatrは未使用データの翌月繰り越しは無いと注記しています。

「無制限」や「使い切っても使える」という表現がどこまでを指すのかは、国や事業者によって設計が違います。考え方はデータ無制限eSIMの実態で整理しています。

道路の13%はモバイル網の外にある

同じ市場レポートには、主要な道路・高速道路のうち10万km超・87%がモバイル網でカバーされているとあります。裏を返せば主要道路の13%はカバーされていません。バンフやアイスフィールド・パークウェイのようなロードトリップを組むなら、SIMの銘柄を変えても解決しない区間があるということです。

この前提で組むなら、経路と地図を先に端末へ落としておくのが確実です(オフライン地図の準備)。

カナダのプリペイドSIMにはCRTCの保護が一部しか適用されない

適用される条項が明文で限定されている

カナダにはCRTC無線コードという消費者保護の規則があります。ここが他国と大きく違うのは、プリペイドに適用される条項が明文で列挙されている点です。CRTCは「すべての条項はポストペイドに適用される。プリペイドにも適用されるのは次の条項である」として、A.1-3 / B.2 / E.1・E.4-5 / F.1-4 / G.1-4 / J.1 を挙げています。

この一覧に入っていないものは、プリペイドでは効きません。実務上いちばん影響が大きいのが次の2つです。

  • E.2 データローミング料金の上限: 1請求サイクルあたり$100に達した時点で停止する義務。プリペイドには適用されません
  • E.3 データ超過料金の上限: 1請求サイクルあたり$50に達した時点で停止する義務。こちらもプリペイドには適用されません

CRTCの消費者向けページも、プリペイド利用者には「データ超過料金を$50に制限する権利」「データローミング料金を$100に制限する権利」が無いと明記しています。プリペイドが請求額の暴走を防げるのは、規制ではなく前払いという仕組みそのものによるということです。だからこそ、カナダから米国側へ日帰りで渡るような行程では、そのプランのローミング条件を購入前に読む必要があります(国際ローミングとeSIMの比較)。

逆にプリペイド専用の保護もある(残高の7日ルール)

J.1はプリペイドにしか存在しない条項です。条文は「プリペイド利用者のコミットメント期間が満了したとき、事業者は無償で少なくとも7暦日、アカウントを有効に保ち既存の残高を維持するためのチャージ機会を与えなければならない」と定めています。プリペイドカードの有効化によるものでも、残高への入金によるものでも同じ扱いです。

帰国後に残高を残したまま放置すると、この7日を過ぎた時点で失われる可能性があるということです。再訪の予定があるなら、この日付を控えておく価値があります。

端末のロック解除は「カナダの事業者に対する」義務

F.1は「無線サービスを提供する目的で事業者が顧客に提供する端末は、ロック解除された状態で提供されなければならない」と定め、ロックされている端末は請求時に無償で解除する義務も課しています。これは2017年12月1日から発効しました。

ただしこの義務が向いているのはカナダの事業者です。日本で購入した端末のロック状態はカナダの規則では解決しません。日本にいるうちにしか直せない項目なので、出発前に確認してください(SIMロック解除の確認方法)。

2027年4月13日からローミング通知が強化される

CRTCは2026年4月13日に「Enhancing Customer Notifications」(TRP 2026-67)を発出し、無線コードのローミング関連条項を改正しました。ローミング開始時の通知内容に加え、$100上限の半分である$50に達した時点でも通知を出す義務が新設されています。適用開始は2027年4月13日で、それまでは現行の規定が続きます。カナダの通信ルールは現在進行形で動いている、と押さえておくと情報の鮮度を判断しやすくなります。

カナダのSIMカードは「どの州で契約するか」で支払額が変わる

州の選択が最初の入力項目になっている

カナダのプリペイドは、購入画面の最初で州を選ぶ設計です。Lucky Mobileの旅行者向けeSIMは「着陸する州を選択してください」と表示し、州を選ばないと先へ進めません。chatrもプランの表示が州単位です。Lucky Mobileの通常プラン画面にも「プランと電話番号を見るために州を選んでください」と書かれています。

これは単なる在庫の問題ではありません。選んだ州が、割り当てられる市外局番と、上に乗る税と、州の制度上の負担を決めます。

州によって上乗せされるものが違う

分かりやすい例が緊急通報の負担金です。アルバータ州政府は、アルバータ州の市外局番を持つ稼働中の無線端末1台につき月95セントの911レビーを利用者が負担し、通信事業者が徴収して州に納付すると公表しています。同種の負担金は州ごとに有無も金額も違います。

さらにカナダの売上税は連邦のGSTに加えて州ごとの税が乗る構造で、州によって合計が変わります。無線コードのA.2は「契約に記載された価格が明確であり、税込みか否かを示さなければならない」と定めているので、表示価格が税抜きなのかは必ず書いてあります。読むべきはそこです。

長期滞在なら州の選択が後から効いてくる

数日の旅行なら差は小さいものです。しかし語学留学やワーキングホリデーのように月単位で滞在するなら、市外局番は滞在先の州に合わせておくほうが後の手続きで扱いやすくなります。滞在が長い場合の通信手段の組み方はワーキングホリデーの通信手段で整理しています。現地番号が本当に要るのかという判断はデータ専用eSIMと電話番号を先に読んでください。

カナダのSIM・eSIMは入手経路と対応端末が事業者ごとに違う

同じ「eSIM」でも買える場所が違う

「eSIMならオンラインで完結する」という前提は、カナダでは事業者ごとに崩れます。

  • chatr: 公式のeSIM案内は「eSIMを買うにはchatrの販売店へ行ってください」「chatr Mobileの店舗でeSIMカードを購入し、店内でセットアップを完了してください」と書いています。店頭が前提です。端末を買い替えたときも、店頭で新しいeSIMか物理SIMを買い直す必要があると案内されています
  • Lucky Mobile: 旅行者向けの「Tourist eSIM」をオンラインで申し込む導線が公式に用意されており、州を選んで進みます

到着直後から通信が要るなら、店頭受け取りが前提の方式は選択肢から外れます。空港で買う前提で組むことの是非は空港で買うか日本で買うかで整理しています。

対応端末の条件は事業者が公表している

端末側の条件も公式に出ています。Lucky Mobileの旅行者向けeSIMは、対応端末を最新OS上のiPhone XS以降、Google Pixel 6シリーズ以降、Samsung Galaxy S21・Z Fold 3・Flip 3・Note20以降としています。chatrはiOS 12.1以降、またはAndroid Q(10)以降としています。

一般的なeSIM対応機種の一覧より条件が狭いことがあるので、手持ちの端末が一般論として対応していても、その事業者の一覧に載っているかは別に確認してください対応機種の確認)。複数人で分け合う予定があるなら、テザリングの可否も確認項目です(eSIMのテザリング)。

3G停波の影響は端末の世代で決まる

古い端末を持ち込む場合はもう1つ条件が加わります。Bellは公式に、マニトバ州で2025年12月31日、全国で2027年3月1日に3G/HSPA網を停止すると告知しています。停止後は3G/HSPAに依存する端末が音声・SMS・データに加えて9-1-1にも接続できなくなると明記されています。必要なのはVoLTE対応です。

同じ構造は隣国でも起きており、アメリカの現地SIMで詳しく扱いました。「SIMは買えたのに使えない」は端末側の世代が原因のことがあります。

カナダでSIMカードを買う前に確認する5項目

  1. どのブランドか、どの網に載るか。Rogersのプリペイドは2025年2月20日にchatrへ移っています。ブランド名で調べてから店舗を決めます
  2. 4Gで足りるか。旅行者が買えるプリペイドは4G LTEです。5Gが要る用途なら別の手段を検討します
  3. どの州で契約するか。市外局番・州税・911レビーが変わります。長期滞在ほど効いてきます
  4. 入手経路。chatrのeSIMは店頭が前提、Lucky Mobileの旅行者向けeSIMはオンラインの導線があります
  5. 端末の条件。SIMロック解除、eSIM対応機種、VoLTE対応。日本にいるうちにしか直せません

この5つが埋まらないまま価格だけで選ぶと、現地で調整が効きません。出発前にインストールを済ませておきたい場合は、Coral eSIMのカナダプランのように事前に用意できる選択肢もあわせて検討してください。フィリピンのように登録制度そのものが壁になる国と違い(フィリピンの現地SIM)、カナダではブランドと州の選択が判断の中心になります。

FAQ

カナダのプリペイドSIMで5Gは使えますか?

旅行者が買えるプリペイドブランドは4G LTEです。chatrは公式に「Fast 4G data」「nation-wide 4G coverage」、Lucky Mobileは全プラン共通で「4G LTE speeds」と記載しています。CRTCの市場レポートが示す5Gの人口カバー94%(2024年時点)は、プリペイドの購入判断には効きません

カナダでSIMカードを買うのに与信審査や契約は必要ですか?

プリペイドブランドは公式に不要としています。chatrは「与信審査なし・契約期間なし・コミットメントなし」、Lucky Mobileの旅行者向けeSIMも「与信審査なし・長期契約なし・データ超過料金なし」と案内しています。ただし店頭での手続きに必要な書類は事業者と店舗によって異なるため、パスポートは携行してください。

カナダのeSIMはオンラインで買えますか?

事業者によります。Lucky Mobileは旅行者向けeSIMをオンラインで申し込む導線を公式に用意していますが、chatrは公式に「eSIMを買うにはchatrの販売店へ行ってください」とし、店舗でのセットアップを案内しています。到着直後から通信が必要なら、この違いが選択を決めます。日本で先に用意する方法もあります。

帰国後に残ったプリペイド残高はどうなりますか?

CRTC無線コードのJ.1は、プリペイドのコミットメント期間が満了した時点から、無償で少なくとも7暦日のチャージ猶予を与えることを事業者に義務づけています。この期間内にチャージすればアカウントと残高は維持されます。逆に言えば、7日を過ぎたら残高が残る保証はありません。再訪の予定があるなら期限を控えておいてください。

表示されている月額と実際の支払額が違うのはなぜですか?

州ごとの負担が上に乗るためです。カナダの売上税は連邦のGSTに州ごとの税が加わり、さらに州によっては緊急通報の負担金があります。アルバータ州は州の市外局番を持つ稼働端末1台につき月95セントの911レビーを公表しています。無線コードのA.2は価格が税込みか否かを明示する義務を定めているので、表示が税抜きかどうかは必ず書いてあります

カナダのSIMカードは価格ではなく「ブランドと州」で決まる

カナダのSIM選びが他の国と違うのは、制度が壁になるのではなく、制度が選択の形を決めている点です。プリペイドに適用される条項はCRTCが明文で限定しており、購入画面は州の選択から始まり、Rogersのプリペイド窓口は2025年に移管されました。どれも公式サイトに書いてあるのに、価格比較の視点からは見えません。

4Gで足りるか、どの州で契約するか、その事業者のeSIMはどこで受け取るのか。この3つを先に決めれば、あとは滞在日数に合う容量を選ぶだけになります。到着した瞬間から使いたい、店舗を探す時間を旅程に入れたくないという場合は、出発前にインストールできるeSIMが向いています。Coral eSIMのカナダプランプラン一覧もあわせて確認してください。現地でつながらないときの初動は到着直後につながらない時のチェックリストにまとめてあります。

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