結論: 「無制限」は「速度制限がない」という意味ではありません。定額で提供量に上限を設けないプランを指す言葉であって、通信の速度や品質に上限を置かないという約束ではないからです。ヨーロッパの無制限eSIMは現地事業者の回線を借りて提供されるため、使える量にも実効速度にも事業者の運用上の線が引かれます。見るべきは「何GBか」ではなく、高速で使える上限・その後の速度・テザリング可否・接続する回線の4点です。
渡航先と滞在日数が決まっているなら、必要量から逆算して選ぶほうが確実です。Coral eSIMのプラン一覧で日数に合うものを確認できます。
「無制限eSIM」の無制限は3種類に分かれる
同じ「無制限」という表示でも、約款まで降りると中身は次の3つのどれかです。
1. 速度の上限を設けない完全な無制限
期間中いつでも高速で使えるタイプです。もっとも少ない形で、提供されている場合は「速度制限なし」「FUPなし」といった記載が約款側にも存在します。表側の広告文だけでこの型だと判断しないでください。
2. 1日あたりの高速枠があり、超えると低速になる(デイリーFUP)
もっともよく見かける形です。1日あたり定められたGB数までは高速で、それを超えると当日の残り時間は低速に落ち、日付が変わると高速に戻ります。ここで確認が要るのは、1日の起算がどのタイムゾーンの何時かです。現地時間の午前0時なのか、購入国や事業者の基準時刻なのかで、実際に高速が戻る時刻がずれます。
3. 期間中の総量に達すると低速化または停止する
「無制限」と表示しつつ、期間全体での高速通信量に上限を置く形です。到達後に低速で使い続けられるのか、それとも通信自体が止まって追加購入が必要になるのかで、旅程への影響がまったく違います。止まる型は実質的に容量制のプランと同じだと考えてください。有効期間そのものの数え方はeSIMの有効期限と起算日で整理しています。
ヨーロッパの無制限eSIMが国ごとに違って見える理由
「無制限」には法律上の定義がある
EUには、無制限プランを名指しで定義した規則があります。Commission Implementing Regulation (EU) 2016/2286 の第2条(2)(c)は「open data bundle」を、定額の周期料金と引き換えに、含まれるモバイルデータの量に上限を設けない料金プランなどと定義しています。つまり「無制限」とは料金と提供量の関係を指す言葉であって、速度や品質の保証ではないことが、制度の側でも前提になっています。
無制限プランでも、ローミング時に使える量は式で決まる
同じ規則の第4条(2)は、open data bundle の利用者がローミング先で国内価格のまま使える量について、「そのプランの国内小売価格(VAT除く・課金期間全体)を、規制上の卸ローミング料金の上限で割った値の少なくとも2倍」という下限を定めています。国内では無制限でも、他社の回線を借りて使う場面では有限の数値に落ちるということです。
これは机上の話ではありません。アイルランドのThreeは自社のEU向けフェアユース条項で、この式による算出例として、同社プランの2018年1月1日時点で7.6GBという数値を公表し、上限を超えるとサーチャージが適用されると記載しています。事業者自身が「無制限プランのローミング上限」を数字で示している例です。
ただしこの規則は、日本から買う旅行者向けeSIMを守るものではない
ここが重要です。同じ規則の第4条(1)は、事業者が顧客に対し自国内の居住または安定的な関係の証明を求めうると定めています。この仕組みはEU域内で契約している人がEU域内を移動するときのためのもので、日本から購入する旅行者向けeSIMには適用されません。
したがって、ヨーロッパ向けの無制限eSIMで「無制限」の中身を決めているのは、法律ではなく事業者の約款だけです。さらに、ヨーロッパを1枚でカバーするタイプは国ごとに接続先の事業者が変わるため、同じプランでも国によって速度も対応世代も変わり得ます。ローミングという仕組み自体の性質は国際ローミングとeSIMの違いで扱っています。
制限後の速度は「何ができるか」で判断する
約款に制限後の速度が数値で書かれていたら、次の実数と突き合わせてください。いずれも提供元が公表している必要帯域です。
- Zoomの音声のみの通話: 60〜80kbps
- Zoomの画面共有(映像サムネイルなし): 50〜75kbps
- Zoomの1対1の高品質ビデオ: 600kbps、グループでは1.0Mbps/600kbps(上り/下り)
- NetflixのHD(720p): 3Mbps以上、フルHDは5Mbps以上、4Kは15Mbps以上
この並びから分かることは単純です。数百kbpsの低速でも、地図・メッセージ・音声通話・調べ物は動きます。一方で動画配信とビデオ会議は、低速に落ちた時点でほぼ諦める前提になります。「無制限だが低速」というプランは、連絡と移動のための通信は守るが、映像は守らないという設計だと理解しておくと判断がぶれません。速度が出ないときの切り分けはeSIMの通信が遅いときの原因にまとめています。
無制限eSIMを買う前に約款で確認する4項目
- 高速で使える上限と、その起算。1日あたりか期間総量か。1日制ならリセットが何時のどのタイムゾーンか
- 上限に達した後の速度が数値で書かれているか。「低速」「制限がかかります」としか書かれていない場合、上の必要帯域と比べようがありません。数値のないものは低速時に何もできない可能性を織り込んで選ぶことになります
- テザリング(インターネット共有)が許可されているか、別枠か。パソコンやタブレットを同時に使う旅程では、ここが実質的な上限になります。設定と注意点はeSIMでのテザリングを参照してください
- 接続する回線と対応世代、国ごとの差。ヨーロッパ周遊型では国によって接続先が変わります。端末側が対応していなければ速度は出ません(端末の対応確認)
この4点が明記されていないプランは、「無制限」という語だけが先に立っていると考えてよいです。滞在日数と使い方から必要量を決めてしまうほうが早い場合も多く、Coral eSIMのプラン一覧では日数と容量の組み合わせから選べます。
そもそも無制限eSIMが必要かを、消費量から逆算する
無制限を選ぶべきかどうかは、動画を見るかどうかでほぼ決まります。Netflixが公表しているモバイルデータの設定では、「自動」で1GBあたり約4時間、「データ節約」で約6時間視聴できるとされています。一方で「最大」設定は20分で1GB以上を消費することがあり、Netflix自身が「無制限のデータプランをご利用の場合のみ推奨」と明記しています。
裏を返せば、移動中に地図を見て、宿とレストランを調べ、写真を数枚送り、家族に連絡するという使い方であれば、消費量はこの桁に届きません。無制限が効いてくるのは、機内や移動中に動画を流す人、テザリングでパソコン作業をする人、滞在が長い人です。長期滞在での考え方は長期滞在・ノマドのeSIM選びで扱っています。
FAQ
無制限eSIMは本当に容量を気にせず使えますか?
プランによります。「無制限」は定額で提供量に上限を設けないという意味の言葉で、速度に上限を置かないという約束ではありません。多くは1日あたりまたは期間総量の高速枠があり、超えると低速になります。約款で高速枠と制限後の速度を確認してください。
ヨーロッパの無制限eSIMは、行く国によって使い勝手が変わりますか?
変わり得ます。ヨーロッパを1枚でカバーするプランは国ごとに接続先の現地事業者が変わるため、同じプランでも速度や対応する世代が国によって異なります。訪問国それぞれの接続先が案内されているかを確認してください。
制限後の速度が「低速」としか書かれていない場合はどう判断すればいいですか?
数値がなければ比較のしようがないため、低速時にはほとんど何もできない可能性を前提に選ぶことになります。判断の目安として、Zoomの音声通話は60〜80kbps、NetflixのHD視聴は3Mbps以上が必要だと公表されています。
無制限eSIMでテザリングはできますか?
プランごとに扱いが違います。許可されている場合でも、テザリング分に別の上限が置かれていることがあります。パソコンやタブレットを同時に使う予定があるなら、購入前に約款のテザリングの項目を必ず確認してください。
旅行では無制限と容量制のどちらを選ぶべきですか?
動画配信やテザリングでの作業が旅程に入るなら無制限が向きます。地図・検索・メッセージ・写真の送信が中心なら、消費量は大きくならないため容量制で足ります。滞在日数と使い方から必要量を出してから比べてください。
無制限eSIMは「無制限か」ではなく「制限後に何ができるか」で選ぶ
無制限eSIMをめぐる情報は、価格と容量表示の比較に寄りすぎています。しかし「無制限」は速度を約束する言葉ではなく、EUの規則が定義しているとおり、定額と提供量の関係を指す言葉です。ローミングで提供される以上、事業者は必ずどこかに線を引きます。実際に、EU域内向けの制度ではその線を計算式で算出し、数値として公表している事業者があります。
そして旅行者向けeSIMの場合、その線を決めているのは制度ではなく約款だけです。だからこそ、比べるべきは「無制限と書いてあるか」ではなく、高速枠・制限後の速度・テザリング・接続先の4点になります。Coral eSIMのプラン一覧で滞在日数に合うものを選び、旅程に動画やテザリングが含まれるかどうかで必要量を決めてください。eSIMの弱点もあわせて把握しておくと、現地で慌てずに済みます。
