SIMカードが故障すると、端末は圏外のままになり、画面に「SIMなし」「SIMが無効です」といった表示が出て、通話もモバイルデータ通信も使えなくなります。ただしこの症状が出たからといって、原因がSIMカードだとは限りません。端末側の読み取り不良、回線側の障害、契約の停止、eSIMプロファイルの誤消去でも、画面上はまったく同じ見え方をします。原因を確定させないままショップに行くと、必要のない再発行手数料を払って症状が直らない、ということが起こります。ここでは公式情報だけを根拠に、症状の切り分け手順、再発行の実際の手続き、そして海外滞在中に同じことが起きたときに何が詰むのかを整理します。

SIMカードが故障したときに実際に起きる症状

物理SIMカードは、樹脂のカードに金属の接点(コンタクトパッド)が露出した部品です。壊れ方はほぼこの接点まわりに集中します。故障時に現れる代表的な症状は次のとおりです。

  • アンテナ表示が圏外のまま復帰しない
  • ステータスバーや設定画面に「SIMなし」「SIMが無効です」「SIMカードが挿入されていません」と表示される
  • 通信が一瞬つながっては切れる、を繰り返す(接点の接触不良に多い)
  • 端末を再起動すると数分だけ復活し、また圏外に戻る
  • 通話とSMSは使えるがデータ通信だけ落ちる、あるいはその逆

接点の劣化は、抜き差しの繰り返し、指で触れたことによる皮脂の付着、汗や結露による腐食、静電気、トレイを閉じるときの物理的な歪みで進みます。ソフトバンクは公式の注意事項として、USIMカードのIC部分に手を触れないこと、無理な着脱をしないこと、高温多湿の場所や静電気の影響を受ける場所を避けることを挙げています。旅行中は端末の抜き差しの回数が跳ね上がるため、日常より故障の確率が上がる場面だと考えたほうが安全です。

一方でeSIMには接点そのものが存在しません。端末に組み込まれたチップに契約情報(プロファイル)を書き込む方式なので、抜き差しによる接触不良も、腐食も、紛失も原理的に起こりません。ただし後述するとおり、eSIMには物理故障の代わりに別種のリスクがあります。

その症状は本当にSIMの故障か。eSIM時代の切り分け手順

Appleは「SIMが無効です」「SIMなし」と表示される場合の対処として、物理SIMとeSIMで異なる手順を案内しています。順番に潰していくと、SIM起因かどうかが確定します。

先に全員がやること

  1. 契約中のプランが有効か(未払いによる利用停止がないか)を確認する
  2. 機内モードのオン・オフを試す
  3. 端末を再起動する
  4. 「設定」→「一般」→「情報」でキャリア設定アップデートの有無を確認する
  5. 契約中の事業者に回線障害が出ていないか、事業者の障害情報ページを見る

この5つで直る事例が相当数あります。ここまでで復旧すればSIMは壊れていません。

物理SIMの場合は2回のテストで確定する

Appleが案内する物理SIM向けの手順は、実質的に犯人を特定するための切り分けテストになっています。

  1. 入れ直す。 トレイからSIMを取り出し、接点に汚れがないか目視し、乾いた柔らかい布で軽く拭いてから戻します。Appleはトレイが完全に閉まり、緩んでいないことを確認するよう明記しています。トレイの浮きだけが原因だった、という事例は珍しくありません。
  2. 別の端末に、そのSIMを挿す。 他の端末でも圏外なら、SIM側が原因である可能性が高い。他の端末では正常に使えるなら、SIMは生きていて端末側の読み取り部が疑わしいことになります。
  3. 別のSIMを、その端末に挿す。 別のSIMなら通信できるなら端末は正常、つまりSIMの故障が確定します。別のSIMでも圏外なら端末側の問題です。Appleはこの段階でも解決しない場合、修理が必要な可能性があると案内しています。

この2回のテストを通す前に再発行を申し込むと、原因が端末側だった場合に手数料が無駄になります。順番を逆にしないことが、この記事でいちばん実利のある部分です。

eSIMは物理テストができないぶん、判断が難しい

eSIMには「抜いて別の端末に挿す」という検証手段がありません。Appleの案内も、eSIM利用時に「SIMなし」が出た場合は通信事業者に問い合わせることという一文で終わっています。デュアルSIM構成にしている場合は、もう一方の回線が生きているかどうかが有力な手がかりになります。片方だけ落ちていれば端末ではなくその回線側、両方落ちていれば端末側の疑いが濃くなります。旅行前にデュアルSIMを組んでおくと、この切り分けが現地でできるという副次的な利点があります。設定の考え方は旅行前のデュアルSIM設定で解説しています。

なお、eSIMで通信できない原因の多くは故障ではなく設定側にあります。回線の切り替え漏れやデータ通信の割り当てミスが典型で、これはeSIMがつながらないときの切り分けで個別に扱っています。

SIMカードの再発行にかかる手数料と手続き方法

故障が確定したら再発行します。ここで見落とされがちなのが、手数料が「どこで手続きするか」で大きく変わるという点です。各社が公表している改定内容は次のとおりです。

  • NTTドコモ:2025年9月5日の改定で、ドコモショップ・量販店・一般代理店および電話(インフォメーションセンター)でのSIM再発行・eSIM再発行の事務手数料が3,850円(税込)から4,950円(税込)になりました。一方でウェブでの各種手続きの事務手数料は今回の改定対象外で、引き続き無料と明記されています。
  • au:SIMカードの再発行は店舗での申し込みで、手数料は4,950円(税込)、翌月請求と案内されています。手続きには利用中の端末、SIMカード(紛失・盗難の場合は不要)、本人確認書類が必要です。
  • ソフトバンク:2026年1月21日の改定で、ウェブでのSIM再発行の事務手数料が、USIMカードは1,100円、eSIMは無料となりました。店頭での再発行手数料は4,950円です。

金額そのものより注目すべきなのは方向の一致です。3社とも、店頭・電話は約5,000円に上げる一方で、ウェブ完結のeSIM再発行は無料または低額に据え置いています。物理カードの発行と配送というコストが、そのまま価格差になって表面化していると読めます。

海外滞在中にSIMカードが故障すると再発行が成立しない

ここが、国内向けの解説記事がほぼ触れていない部分です。物理SIMの再発行は、新しいカードという「物」を受け取って初めて完了します。受け取り方法は店頭での即日交付か、契約住所への配送のどちらかです。どちらも日本国内にいることが前提になっています。

つまり海外滞在中に物理SIMが故障した場合、次の状況になります。

  • 日本のキャリアショップには行けない
  • 配送を頼んでも、届く先は日本の契約住所であって滞在先ではない
  • 手続きの多くは本人確認が必要で、その本人確認をする通信手段が今まさに死んでいる
  • ホテルや空港のWi-Fiに逃げられても、SMSで届く認証コードが受け取れない

この状態から復旧する現実的な手段は、物理カードの配送を必要としない回線を新しく引くこと、つまりeSIMの新規発行に事実上限られます。eSIMはQRコードまたは事業者アプリ経由でプロファイルを受け取る方式なので、Wi-Fiさえあれば滞在先で完結します。旅行用eSIMを最初から一本入れておけば、物理SIMが死んでもデータ通信が残り、そこから日本の契約回線の手続きに進めます。プランの選び方はeSIMプラン一覧で確認できます。

渡航前に自分の端末がeSIMに対応しているかは必ず確認してください。同じ機種名でも購入した国によって対応が変わる例が実際にあります。判定手順はスマホのeSIM対応を確認する方法にまとめてあります。

eSIMは故障しないが、消すと元に戻せない

eSIMに乗り換えれば故障の心配がなくなる、という理解は半分だけ正しい。物理的な接触不良は消えますが、代わりに操作ミスによる不可逆な喪失というリスクが生まれます

Appleは公式に、eSIMを消去すると「通信事業者に問い合わせて、新しいeSIMを入手しなければならなくなる」と説明しています。さらに踏み込んで、通信事業者から直接指導されない限り、トラブルシューティングの手順としてeSIMを消去しないよう警告しています。端末の初期化やバックアップからの復元の際に誤ってeSIMを消してしまうと、モバイル通信が失われ、復旧には事業者への連絡が必要になるとも明記されています。

これは「圏外だから、とりあえず全部消して入れ直そう」という物理SIM時代の直感がそのまま最悪手になる、ということです。物理SIMなら抜き差しは何度でもやり直せますが、eSIMプロファイルの消去はやり直しがききません。旅行用eSIMを使い終わって削除するときも、帰国後に削除するのが安全です。手順と注意点は旅行後のeSIMの削除で扱っています。QRコードを紛失した場合の再発行可否は事業者ごとに異なるため、eSIMのQRコードをなくしたときもあわせて確認してください。

SIMカードの故障を防ぐために日常でできること

完全には防げませんが、発生確率は下げられます。ソフトバンクが公式に挙げている注意事項が、そのまま実務的な予防策になります。

  • IC(金属接点)部分に指で触れない。触れた場合は乾いた柔らかい布で拭く
  • 必要のない抜き差しをしない。SIMピンで無理にこじ開けない
  • 高温多湿の場所、直射日光の当たる場所、静電気の影響を受けやすい場所に放置しない
  • 曲げる、落とす、重いものを載せるといった物理的な負荷をかけない
  • トレイを閉じるときに斜めに入っていないかを必ず確認する

そもそも旅行のたびに現地SIMへ差し替える運用が、抜き差し回数を増やして故障確率を押し上げています。渡航のたびにトレイを開ける必要がないeSIMは、この観点でも物理的な故障リスクを構造的に減らします。

よくある質問

SIMカードが故障すると、中に入っている電話帳やデータは消えますか

現在の一般的な使い方であれば、連絡先や写真は端末本体やクラウドに保存されているため、SIMの故障とは無関係に残ります。SIMカードが保持しているのは主に加入者を識別するための契約情報です。ただし古い端末で連絡先をSIMに保存する設定にしていた場合は、その分は読み出せなくなる可能性があります。

電話番号は変わりますか

再発行では電話番号は変わりません。新しいカードやプロファイルに同じ契約情報が書き込まれます。カードの製造番号(ICCID)は変わりますが、利用者側で意識する場面はほとんどありません。

SIMを抜き差ししたら直りました。故障ではなかったということですか

その時点では復旧していますが、接点の接触不良が始まっている可能性があります。同じ症状が繰り返し出るようなら、接点の劣化が進行していると考えて、渡航前など重要な予定の前に交換しておくほうが安全です。抜き差しで一時的に直るという挙動自体が、接触不良の典型的なサインです。

eSIMが故障することはありますか

eSIMは端末に組み込まれたチップにプロファイルを書き込む方式なので、抜き差しによる接触不良や紛失は起こりません。ただしプロファイルの消去は元に戻せず、Appleは事業者の指示がない限りトラブルシューティングとしてeSIMを消去しないよう公式に警告しています。故障はしないが、操作ミスの取り返しがつかない、という性質だと理解してください。

海外にいる間にSIMが壊れたら、日本のキャリアに再発行を頼めますか

手続きの申し込み自体は可能な場合がありますが、物理SIMカードは店頭交付か契約住所への配送でしか受け取れないため、滞在先で受け取ることはできません。現地で通信を復旧させたい場合は、物理的な受け取りが不要なeSIMを新たに契約するのが現実的な選択肢になります。渡航前にeSIMを一本用意しておけば、この事態そのものを回避できます。

SIMの故障対策は、壊れてから考えるものではなく渡航前に済ませるもの

SIMカードの故障は、症状だけを見て判断すると端末の不具合や回線障害と区別がつきません。まず別の端末と別のSIMを使った2回のテストで原因を確定させ、そのうえで再発行に進む。この順番を守るだけで、不要な手数料と時間を避けられます。

そして再発行が成立するのは日本国内にいる場合だけです。海外で物理SIMが死ぬと、受け取り手段がないという理由だけで復旧が止まります。この構造的な弱点は、渡航前にeSIMをもう一本用意しておくことでしか埋められません。物理SIMの接点を旅行中に酷使しないで済むという予防効果と、万一のときに通信が残るという冗長性を、同時に手に入れられます。壊れてからどうするかを調べるのではなく、壊れても困らない構成で出発してください。

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