結論: イタリアの通信環境は「速いか遅いか」ではなく、どの数字が自分に適用されるかで決まります。規制当局AGCOMが45都市で実測した平均は下り約331Mbpsですが、これは自前の回線を持つ5社を測った数字です。旅行者が現地で勧められやすい格安ブランドには、当局が公表している契約上の速度上限(30Mbpsなど)が別にかかっています。そして無料Wi-Fiの本人確認義務は、2013年の法律ですでに廃止されています

到着した瞬間から通信を確保しておきたいなら、日本にいるうちに設定を済ませられるeSIMという選択肢があります。Coral eSIMのイタリアプランから滞在日数に合う容量を選べます。

イタリアの通信速度は体感ではなく当局の実測値で確認できる

AGCOMが毎年45都市でドライブテストをしている

イタリアには、規制当局が自ら実測値を公表するという珍しい仕組みがあります。AGCOM(通信保障庁)は決議23/23/CONSにもとづき、独立機関のFondazione Ugo Bordoniに委託して全国45都市で移動体網のドライブテストを実施しています。2025年のキャンペーンは9月から12月にかけて行われ、結果は2026年2月23日に公表されました。

公表された平均値は次のとおりです。

  • 静止した状態での測定: 下り約331Mbps / 上り約58Mbps
  • 市街地を移動しながらの測定: 下り約269Mbps / 上り約54Mbps

測定は各地点で利用可能な最良の技術(best technology)を使う原則で行われ、5Gも含まれます。「イタリアは通信が遅い」という前提で旅程を組む必要はないことが、体感ではなく当局の測定で示されています。

都市によって数字は変わる

主要都市の静止測定の結果は次のとおりです(2025年キャンペーン)。

都市下り上り
バーリ416 Mbps75 Mbps
トリノ355 Mbps67 Mbps
ボローニャ347 Mbps58 Mbps
フィレンツェ343 Mbps52 Mbps
ミラノ329 Mbps64 Mbps
ローマ325 Mbps52 Mbps
パレルモ299 Mbps54 Mbps
ナポリ284 Mbps51 Mbps

最速のバーリと最も低いナポリで1.5倍近い差がありますが、いずれも動画視聴や地図・翻訳の常用には十分な水準です。「北は速く南は使えない」といった単純な図式では説明できない点にも注目してください。バーリもパレルモも南部です。

この数字が適用されるのは5社だけ

ここが最も重要な前提です。AGCOMが測っているのは、自前のインフラで人口カバー率50%以上を達成した事業者に限られます。2025年キャンペーンの対象はFastweb・Iliad・TIM・Vodafone・Wind Treの5社でした。

つまりこの5社以外の回線を使う場合、331Mbpsという数字は自分には適用されません。そして旅行者が現地の売店やオンラインで目にする安価なブランドの多くは、この5社そのものではありません。

すでに現地で通信が遅いと感じている場合の切り分けはeSIMのデータ通信が遅いときの原因と対処にまとめています。イタリア向けプランを先に用意しておけば、現地で回線を探す時間そのものが不要になります。

イタリアの格安ブランドには契約上の速度上限が公表されている

当局が上限値を一覧で公開している

これはイタリア特有の材料です。AGCOMは決議23/23/CONSにより、MVNO(仮想移動体事業者)と大手のサブブランドについて、どの回線に載っているか・使える世代・契約上の速度制限を公表させています。更新は6か月ごとです。旅行者に関係が深い主なものを挙げます。

ブランド載っている回線使える世代契約上の上限
ho.mobileVodafone Italia2G-4G30 Mbps
KenaTIM2G-4G30 Mbps
VERY MOBILEWind Tre2G-3G-4G30 Mbps
LycamobileVodafone Italia2G-4G60 Mbps
Digi MobileTIM2G-4G下り100 / 上り50 Mbps
PostePayTIM2G-4G-5G記載なし
FastwebVodafone Italia2G-4G-4.5G-5G記載なし

331Mbpsの世界と30Mbpsの世界は、同じイタリア国内で並存しています。 しかもこの上限は電波状況や混雑の話ではなく、ホスト事業者との契約で決められた数値です。電波が5本立っていても超えません。

「大手の回線だから速い」は成立しない

AGCOM自身が注記しているとおり、KenaはTIMが販売するブランド、VERY MOBILEはWind Treが販売するブランドで、MVNOですらありません。それでも上限は30Mbpsと明記されています。

したがって「大手キャリアの回線を使っているから安心」という選び方は、イタリアでは判断材料になりません。見るべきなのは回線名ではなく、この表の右2列です。

5Gが使えるブランドは限られる

同じ表の「使える世代」の列を見ると、ho.mobile・Kena・VERY MOBILE・Lycamobileはいずれも5Gの記載がありません。AGCOMの実測に5Gが含まれているのに、これらのブランドではその技術に乗れないということです。

なお表の内容は6か月ごとに更新されるため、渡航時点の条件は必ず各ブランドの公式サイトで確認してください。本記事の数値は2026年8月13日に確認した表の内容です。

3G前提の端末は避ける

同じ表からもう1つ読み取れることがあります。TIM系とVodafone Italia系のブランドは「2G-4G」と記載され、3Gが列挙されていません。3Gが残っているのはWind Tre系の一部だけです。

古い端末や、4Gでの音声通話(VoLTE)に対応していない端末を持ち込むと、電波表示が出ていても実際には使えない状況が起こり得ます。持ち込む端末の対応状況はeSIM対応端末の確認方法SIMロック解除の要否で先に確認しておいてください。

イタリアの無料Wi-Fiに身分証は要らない

2013年の法律で本人確認義務は廃止された

日本語の記事にはいまも「イタリアの公衆Wi-Fiはパスポート提示が必要」という記述が残っていますが、これは2013年以前の話です。2013年6月21日の政令69号(DL 69/2013)第10条は、Wi-Fiによる公衆インターネット提供について「利用者の本人確認を要しない」と明文で定めています。同条は2013年8月21日に発効しました。

さらに同条は、インターネット接続の提供が主たる商業活動でない場合、電子通信法典(259/2003)第25条とテロ対策法(144/2005)第7条の適用対象外とすることも定めています。カフェやホテルがWi-Fiを提供するために通信事業者としての手続きを踏む必要がないということです。これがイタリアで飲食店のWi-Fiが増えた制度的な理由です。

ただし「本人確認が要らない」は「安全」の意味ではない

本人確認が不要になったことは、裏を返せば誰でもアクセスポイントを立てられるということでもあります。店名を模したSSIDを立てられても、制度上それを止める仕組みはありません。公衆Wi-Fiを使う前提での注意点は海外のフリーWi-Fiに潜むリスクと対策にまとめています。

国が運営する全国Wi-Fi「WiFi Italia」はアプリ前提で動いている

SSIDを探すのではなくアプリが自動で接続する

イタリアには、企業・メイドインイタリー省(MIMIT)が主導する全国規模の無料Wi-Fi事業「WiFi Italia」があります。ネットワーク構築は2019年1月23日にInfratel Italiaへ委託され、TIMが実施しています。

この事業の特徴は、SSIDを探して接続するのではなく、専用アプリを入れると wifi.italia.it というネットワークへ自動接続する設計になっている点です。初回に登録すれば、以後は別の街のホットスポットでも再認証が要りません。既存の自治体Wi-Fiも連合方式で取り込まれます。

「全7,900コムーネ」は目標であって現況ではない

Infratelの説明は「イタリアの7,900すべてのコムーネに無料ホットスポットを設置する」ですが、公式サイトのカウンターが示す実数は別です。2026年8月13日時点の表示は次のとおりでした。

  • 参加している自治体・機関: 4,761
  • 設置済みホットスポット: 24,875
  • 登録ユーザー: 581,686

つまり参加自治体は目標の6割程度で、ホットスポット数も1自治体あたり平均5か所ほどです。医療機関への5,000か所の展開も2020年3月から進んでいます。旅行の主要導線を支える密度ではない、と考えたほうが現実的です。

登録手段に旅行者向けの壁がある

公式の案内によれば、登録は「3ステップの手続き」または「SPID(公的デジタルID)での接続」のいずれかです。SPIDはイタリアの公的デジタルIDなので、短期の旅行者が取得することは想定されていません。旅行者が使う場合は3ステップの登録に頼ることになります。

アプリの地図はオフラインでもホットスポットの位置を確認できますが、接続そのものにはホットスポットに近づく必要があります。到着直後の空港やターミナルで最初の通信を確保する手段としては期待しないほうが安全です。到着時に通信がつながらないときの対処を先に読んでおくと詰まりにくくなります。

到着前に決めておくべきことは3つに絞れる

  1. 自分が乗る回線を決める。 AGCOMが測っている5社の網に載るのか、上限30Mbpsのブランドに載るのかで体験が変わります。空港でSIMを買う場合とeSIMの比較で購入場所ごとの違いを確認できます
  2. 端末の対応を確認する。 3Gが列挙されていない回線が多いため、VoLTE非対応の古い端末はリスクになります
  3. 無料Wi-Fiを主手段にしない。 法律上は身分証不要で使いやすい一方、国営事業の密度は旅行導線を賄う水準にありません。eSIMとポケットWi-Fiの比較で常時接続の手段を先に決めておくのが確実です

複数人で旅行する場合はeSIMのテザリング可否、他のEU諸国も回る場合は国際ローミングとeSIMの違いもあわせて確認してください。

FAQ

イタリアの通信速度は実際どのくらいですか?

規制当局AGCOMが2025年9月から12月に45都市で実施したドライブテストでは、静止測定で下り平均約331Mbps・上り約58Mbps、市街地の移動測定で下り約269Mbps・上り約54Mbpsでした。ただしこれは自前インフラで人口カバー50%以上の5社(Fastweb・Iliad・TIM・Vodafone・Wind Tre)を測った数字で、格安ブランドには別途、契約上の速度上限がかかります。

イタリアの無料Wi-Fiを使うのに身分証やパスポートは必要ですか?

不要です。2013年6月21日の政令69号第10条が、Wi-Fiによる公衆インターネット提供に利用者の本人確認を求めないと明文で定めています。2013年8月21日に発効しており、それ以前の「身分証が必要」という情報は現行制度を反映していません。ただし個々の店舗やホテルが独自にメールアドレスや部屋番号の入力を求めることはあります。

「WiFi Italia」は旅行者でも使えますか?

専用アプリでの登録が前提です。公式には3ステップの登録手続きか、SPID(イタリアの公的デジタルID)での接続が案内されています。SPIDは短期旅行者が取得できるものではないため、前者を使うことになります。2026年8月13日時点の公式カウンターでは参加自治体4,761・設置ホットスポット24,875で、目標の全7,900コムーネには達していません。主要な通信手段として当てにするのは避けたほうが安全です。

イタリアで買った格安SIMが遅いのはなぜですか?

電波状況ではなく契約上の上限である可能性があります。AGCOMが公表しているMVNO一覧では、ho.mobile・Kena・VERY MOBILEはいずれも上限30Mbps、Lycamobileは60Mbpsと明記されています。KenaはTIM、VERY MOBILEはWind Treが販売するブランドですが、大手の回線に載っていても上限は変わりません。この一覧は6か月ごとに更新されます。

イタリアで使えるSIMは他のEU諸国でもそのまま使えますか?

EU域内の事業者が提供する回線であれば、EU加盟国とアイスランド・リヒテンシュタイン・ノルウェー・モルドバ・ウクライナで国内料金が適用されます。ただし公正利用方針の上限があり、超過分には2025年時点で1GBあたり1.30ユーロ+VATの追加料金が発生し得ます。EU域外の事業者が販売する旅行用回線はこの制度の対象ではないため、対応国は商品ごとに確認してください。

イタリアの通信は「速いか遅いか」ではなく「どの数字が自分に適用されるか」で決まる

イタリアは、規制当局が45都市の実測値を毎年公表し、さらに格安ブランドの契約上の速度上限まで一覧で開示している珍しい国です。判断に必要な材料は、体感を語るまでもなくすべて公開されています

そのうえで結論は変わりません。331Mbpsという数字は5社の網に載る人のもので、30Mbpsの上限がかかるブランドを選べばその世界には入れません。無料Wi-Fiは法律上たしかに使いやすくなっていますが、国営事業の設置数は旅行導線を支える密度に届いていません。到着前にどの回線に乗るかを決めておくことが、現地での通信の質をほぼ決めます。

Coral eSIMのイタリアプランなら日本にいるうちに設定を済ませられます。手順に不安があれば旅行用eSIMの設定手順APN設定の確認方法を先に読んでおいてください。

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