eSIMにしたからといって、物理SIMより電波が弱くなることはありません。SIMの中に入っているのは、あなたが誰かを示す加入者情報と、どの携帯電話網につながるかの優先リストで、カードで差し込むか端末に書き込むかが違うだけで、中身の役割は同じです。Appleも、eSIMでのローミングは物理SIMと同じように動くと案内しています。電波の入りに差が出るとすれば、それは「そのSIMがどの網につながる設定になっているか」と「端末がその網の周波数に対応しているか」の違いです。この記事では、携帯電話の国際標準である3GPPの仕様とAppleの公式サポートをもとに、eSIMの電波を左右する要素と、海外で電波をつかみやすくする設定を整理します。

旅行先で使うeSIMは、国やエリアごとのプランをCoral eSIMのプラン一覧から選べます。出発前に設定しておけば、着陸後すぐに現地の網につながります。

eSIMと物理SIMで電波の入りが変わらない理由

SIMは電波を出したり受けたりする部品ではありません。3GPPの仕様(TS 31.102)で定められたSIMの中身は、おもに次のような情報です。

  • 加入者の識別番号(IMSI):どの事業者の、どの契約者かを網に伝える番号
  • 事業者が決めた優先ネットワークのリスト:ローミング先で優先してつなぐ網と、その網で使う通信方式(4G・5Gなど)
  • つながってはいけないネットワークのリスト:接続を断られた網を記録し、自動でつなぎにいかないようにする

eSIMは、この情報(プロファイル)をオンラインで端末に書き込む仕組みです。総務省のガイドラインも、eSIMサービスを「SIMを差し替えずに、加入者の情報を通信で端末に書き込んだり書き換えたりするサービス」と定義しています。情報を運ぶ入れ物が変わるだけなので、同じ事業者の同じ契約なら、eSIMでも物理SIMでも同じ網に同じ条件でつながります。

なお、「電波の受信感度はSIMの形に左右されない」と直接書いた公式文書は、Apple・Google・GSMA(携帯事業者の業界団体)のいずれでも見つかりませんでした。ここでの説明は、仕様上SIMが何を担っているかにもとづくものです。

eSIMの電波を左右するのは「どの網につながるか」

旅行用eSIMで「電波が弱い」「圏外になる」と感じる場合、原因の多くはSIMの形ではなく、つながっている現地の網にあります。旅行用eSIMは、現地の事業者と提携して、その網をローミングで使う仕組みです。提携先の網がその場所で強ければ電波はよく入り、弱ければ入りにくくなります。

スマホが網を選ぶ順番

3GPPの仕様(TS 23.122)では、自動選択のときスマホは次の順番で網を探します。

  1. 契約した事業者自身の網(ホームネットワーク)
  2. 利用者が登録した優先リストにある網
  3. 事業者がSIMに書き込んだ優先リストにある網
  4. それ以外で、電波の品質が良い網
  5. 残りの網を電波の強い順に

海外ではホームネットワークがないので、実際にはSIMに書かれた優先リストの網が、電波の強い網より先に選ばれることがあります。同じ場所でも、SIMによってつかむ網が違い、アンテナ表示が変わるのはこのためです。eSIMか物理SIMかではなく、どの事業者のSIMか、どの網と提携しているかで決まります。

4Gか5Gかもプランで決まる

SIMの優先リストには、網ごとに使う通信方式も書かれています。端末が5Gに対応していても、プランや提携先の網が4Gまでなら4Gでつながります。国ごとのプランで、提携先の網と通信方式を確認しておくと安心です。

端末側でeSIMの電波が変わる要素

対応している周波数(バンド)

電波を受けるのは端末のアンテナと通信チップで、どの周波数に対応しているかは機種ごとに違います。Appleは、iPhoneの機種ごとの5GとLTEの対応バンドを公式サイトで公開しています。旅行先の網が使う周波数に端末が対応していないと、そのSIMがeSIMでも物理SIMでも電波はつかめません。古い機種や海外モデルを使う場合は、対応バンドを確認しておきましょう。

デュアルSIMではデータに使える回線は1本

日本の回線を残したまま旅行用eSIMを追加する使い方では、1台に2つの回線が入ります。Appleの案内では、iPhoneはデュアルSIMのとき同時にデータ通信に使えるのは1回線だけで、もう一方は通話とSMSの待ち受けに使います。また、iPhone 13以降は2つのeSIMを同時に使えます。データ通信に使う回線が日本の回線のままだと、旅行用eSIMの電波が入っていてもデータは流れません。設定は海外旅行でのデュアルSIM設定で詳しく解説しています。

「電波は立っているのに遅い」はeSIMの電波の問題とは限らない

アンテナ表示は、つながっている網の電波の強さの目安です。表示がしっかり立っているのに通信が遅い場合は、電波ではなく、網の混雑や、通信がどの国を経由しているか、プランの速度制限といった別の原因を疑います。この切り分けはeSIMが遅い時の原因と対処で整理しているので、あわせて確認してください。

海外でeSIMの電波をつかみやすくする設定

Appleの公式サポートは、海外で「圏外」や「検索中」と表示されるときの確認として、次の点を案内しています。

  • データローミングをオンにする:設定 > モバイル通信 > 通信のオプション(旅行用eSIMの回線)で、データローミングをオンにする。旅行用eSIMは現地の網をローミングで使うため、オフのままではデータが流れない
  • 機内モードを一度オンにしてからオフにする:端末が網を探し直し、その場所で使える網につなぎ直す
  • データ通信に使う回線を旅行用eSIMにする:デュアルSIMの場合、モバイルデータ通信の回線を切り替える

Androidでは、Google Pixelの場合、モバイルネットワークの設定にある「ネットワーク」から、利用できる事業者の網を選べます。それでもつながらない場合は、海外に着いてeSIMがつながらないときの対処法の手順で確認してください。

eSIMの電波についてよくある質問

eSIMは物理SIMより電波が弱いですか?

弱くなりません。SIMが持っているのは加入者情報とつながる網の優先リストで、eSIMはそれを端末に書き込む仕組みです。同じ事業者の同じ契約なら、同じ網に同じ条件でつながります。電波の入りは、つながる網と端末の対応バンドで決まります。

同じ場所でも、SIMによってアンテナの本数が違うのはなぜですか?

SIMごとに、優先してつなぐ網のリストが違うためです。3GPPの仕様では、スマホはSIMに書かれた優先リストの網を、それ以外の電波の強い網より先に選びます。どの網と提携しているかで、同じ場所でもつかむ網と電波の強さが変わります。

eSIMを入れたら日本の回線の電波が悪くなりますか?

SIMが増えても、それぞれの回線がつながる網は変わりません。ただしデュアルSIMでは、データ通信に使えるのは1回線だけです。日本の回線でデータを使いたい場合は、モバイルデータ通信の回線を日本の回線に切り替えてください。

海外でeSIMが圏外になるときは何を確認すればいいですか?

Appleは、データローミングをオンにすること、機内モードを一度オンにしてからオフにして網を探し直すことを案内しています。デュアルSIMの場合は、データ通信の回線が旅行用eSIMになっているかも確認してください。

5G対応のスマホなら、旅行用eSIMでも5Gにつながりますか?

プランと提携先の網が5Gに対応している場合に限ります。SIMの優先リストには網ごとの通信方式も書かれており、プランが4Gまでなら4Gでつながります。また、端末がその国の5Gの周波数に対応している必要があります。

eSIMで電波は落ちない。差が出るのは「つながる網」と「端末」

eSIMと物理SIMの違いは、加入者情報を運ぶ入れ物の違いです。電波を受けるのは端末で、どの網につながるかはSIMに書かれた優先リストで決まります。つまり、eSIMにしたことで電波が悪くなることはなく、電波の入りを良くしたいなら、提携先の網が強いプランを選び、端末の対応バンドを確かめ、現地でデータローミングとデータ回線の設定を確認することが近道です。形ではなく、網と端末で選びましょう。

旅行先に合うプランはCoral eSIMのプラン一覧から確認できます。

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