クルーズ船のネット環境は、海の上では船内Wi-Fi、寄港地では陸上の携帯回線と分けて考えるのが基本です。船内Wi-Fiは衛星回線で、ロイヤル・カリビアンや飛鳥IIのように低軌道衛星のStarlinkを使う船が増え、以前よりずっと使いやすくなりました。一方、海の上でスマホに入る携帯電波は、陸の通信事業者とは別の「船舶用ネットワーク」で、船が領海の外に出てから動く仕組みです。料金は日本の通信事業者のローミング扱いになり、ふだんの定額プランとは別になります。この記事では、船会社や通信事業者などの公式情報をもとに、クルーズのWi-Fiと携帯電波の仕組み、寄港地でのeSIMとの使い分けを整理します。

寄港地で自分の回線を使いたい場合は、出発前に寄港する国に合う旅行用eSIMを入れておくと、港に着いてすぐ地図や連絡に使えます。Coral eSIMのプラン一覧から、行き先の国や地域のプランを選べます。

クルーズ船のWi-Fiは衛星回線:Starlinkを使う船が増えている

海の上には基地局がないため、クルーズ船のWi-Fiは衛星回線でインターネットにつながっています。近年は低軌道衛星を使うサービスが広がっています。

  • ロイヤル・カリビアン:船内Wi-Fiの「VOOM」は、公式ガイドですべての船がSpaceXのStarlink経由で提供していると案内しています。衛星回線なので、陸から遠く離れた海の上でも、寄港地に着く直前でも使えるとしています。
  • プリンセス・クルーズ:船内Wi-Fiの「MedallionNet」は、2024年8月の発表で、Starlinkを含む複数の衛星と陸上の5Gを組み合わせていると説明しています。上位の「MedallionNet Max」は、通常はStarlinkである最も高品質な回線に優先的につながるサービスです。
  • 飛鳥II:2024年2月13日から、KDDIが提供するStarlinkを使ったWi-Fiを全乗客向けに提供しています。公式案内では、船内Wi-Fiは無料で、全客室と船内施設(12デッキのグランドスパとフィットネスセンターを除く)で使えます。
  • 飛鳥III:船内Wi-FiにStarlinkを採用し、無料で提供しています。1日の通信量の上限は設けていないとしています。

有料か無料か、何台まで使えるかは船会社や客室、パッケージで異なるので、乗船前に公式案内で確認しておきましょう。

クルーズの船内Wi-Fiでできないこと:公式案内にある制限

Starlinkで速くなったとはいえ、船内Wi-Fiは陸の光回線と同じではありません。飛鳥IIと飛鳥IIIの公式案内には、次のような注意が書かれています。

  • 衛星通信のため、船全体の通信状況によって速度などの制限がかかることがある
  • 有価証券の取引や行政手続き、オンライン会議など、リアルタイムの操作が必要な使い方には向かない
  • 地域制限のあるアプリやウェブサイトは使えない場合がある
  • 衛星通信のサービスエリアの外、各国の通信規制、荒天や地形による電波障害、メンテナンスのときは接続できないことがある
  • パソコンはセキュリティソフトなどの影響でつながりにくいことがあり、スマートフォンやタブレットの利用を勧めている

飛鳥IIでは、1回の接続は6時間までで、同時に使える台数(客室タイプにより3〜5台)も決まっています。ロイヤル・カリビアンも、天候や一部の極地の海域では一時的に信号が弱くなることがあるとしています。仕事で確実につながる必要がある日は、寄港地で陸上の回線を使う計画にしておくと安心です。

クルーズ中にスマホに入る電波は「船舶用ネットワーク」

クルーズ船の多くは、船の中に小さな携帯電話の基地局を積み、衛星回線で陸とつないでいます。代表的なのが「Cellular at Sea」で、公式サイトでは210隻以上のクルーズ船で運用しているとしています。船が国際水域に入るとサービスが始まり、スマホには事業者名として「Cellular at Sea」または「901」と表示されます。料金は、利用者が契約している通信事業者が、その契約の国際ローミングの条件で請求すると説明しています。

ロイヤル・カリビアンも、船上の携帯電波は「cellular at sea」で、ローミング料金は利用者の通信事業者が決めると案内しています。ソフトバンクの「船内ケータイ」の対応事業者一覧には、米国のWMSと、ノルウェーのTelenor Maritimeの2社が載っています。つまり海の上の電波は、どこかの国の陸上の通信事業者ではなく、船のための別のネットワークです。

船の電波が入るのは領海の外だけ

船舶用ネットワークは、陸の携帯網と電波がぶつからないよう、動かしてよい範囲が決められています。

  • ソフトバンク:港から領海までは沿岸国のネットワークを使い、領海を越えて公海に入った時点から「船内ケータイ」を使えると案内しています。
  • プリンセス・クルーズ:Cellular at Seaは、国際水域に入ってから使えるとしています。
  • EUの規則:船上の携帯サービス(MCV)について、欧州委員会の決定2010/166/EUは、基線から2海里より陸側では使わないこと、2〜12海里では船内のアンテナだけを使うことを定めています。2017年の改正でUMTS(3G)とLTE(4G)も対象に加わりました。

Cellular at Seaの公式サイトも、入港や出港のとき、陸に近づいたときに通信が途切れることがあり、これは通常のことだと説明しています。港に近い海の上では沿岸国の陸上の電波をつかみ、沖に出ると船の電波に切り替わる。これが、クルーズ中にスマホが思わぬ回線につながる理由です。

日本のスマホとクルーズの携帯電波:日本一周クルーズでも公海に出る

ソフトバンクの「船内ケータイ」は申し込み不要で、海外ローミングを使える契約であれば、公海でそのまま船の電波につながります。データ通信は2023年10月に従量課金を廃止し、「海外あんしん定額」で使う形になっています。また、日本周遊のクルーズ船に乗っている場合でも、公海を航行して船内ケータイの対象になることがあると明記しています。国内旅行のつもりでも、海の上では海外と同じ扱いの電波につながり得るということです。

NTTドコモは、船舶ローミングサービスを2022年1月に終了しています。ただし、沿岸地域や船の上で通信事業者の設定を「自動」にしていると、国際ローミングの「WORLD WING」や船舶ローミングの料金がかかり、高額になるおそれがあるという注意を現在も掲載しています。国内の回線だけを使いたい場合は、端末の設定で通信事業者をドコモに指定するよう案内しています。

海の上の電波は、ふだんの国内の定額プランの外にあると考えておきましょう。ローミングの料金の仕組みは海外ローミングとeSIMの比較で詳しく解説しています。

クルーズでWi-FiとeSIMを使い分ける設定の手順

海の上は船内Wi-Fi、寄港地は旅行用eSIMと決めたら、次の順で設定します。

  1. 出発前に自宅で旅行用eSIMを入れる:寄港地で初めて設定しようとすると、ネットがない状態で手間取ります。手順は海外旅行用eSIMの設定方法を参考にしてください。
  2. 出港したら機内モードをオンにし、Wi-Fiだけをオンに戻す:Cellular at Seaの公式サイトは、船の電波を使うには機内モードをオフにし、国際データ通信をオンにしておく必要があると説明しています。使わないなら、その逆にしておけばつながりません。
  3. データローミングをオフにしておく:iPhoneは「設定」→「モバイル通信」→「通信のオプション」で「データローミング」をオフにします(Appleの案内)。Pixelなどは「設定」→「ネットワークとインターネット」→「SIM」でローミングを切り替えます(Googleの案内)。メーカーによって項目名は異なります。
  4. 寄港したら機内モードを解除し、データ通信に使う回線を旅行用eSIMにする:iPhoneは「設定」→「モバイル通信」→「モバイルデータ通信」で使う回線を選べます。旅行用eSIMの回線はデータローミングをオンにして使います。
  5. 表示される事業者名を確かめる:寄港先の国の通信事業者の名前が出ていれば陸上の電波です。「Cellular at Sea」や「901」なら船の電波なので、いったん機内モードに戻します。
  6. 出港前にまた機内モードに戻す:港を離れると、沿岸国の電波から船の電波に切り替わります。

寄港する国が複数ある場合は、国ごとにeSIMを買うより、寄港国をまとめて対象にした地域プランが便利です。航路ごとの選び方はクルーズ旅行でのeSIMの使い方にまとめています。行き先に合うプランはCoral eSIMのプラン一覧から確認できます。

クルーズのWi-Fi・ネット環境についてよくある質問

クルーズ船のWi-Fiは寄港中も使えますか?

船によります。ロイヤル・カリビアンは、衛星回線なので寄港地に着く直前でも使えると案内しています。一方、飛鳥IIと飛鳥IIIは、各国の通信規制などで接続できない場合があるとしています。寄港中は、陸上の電波を使う旅行用eSIMのほうが確実です。

船内Wi-Fiでオンライン会議や動画視聴はできますか?

Starlinkを使う船では以前より快適になっていますが、飛鳥IIと飛鳥IIIの公式案内は、オンライン会議などリアルタイムの操作が必要な使い方には向かないとしています。地域制限のある動画サービスが見られないこともあります。大事な会議は寄港日に陸上の回線で行う計画にしておくと安心です。

スマホに「Cellular at Sea」や「901」と出たら何ですか?

船に積まれた船舶用の携帯ネットワークです。国際水域で動き、料金は契約している通信事業者のローミングとして請求されます。使うつもりがなければ、機内モードにするかデータローミングをオフにしてください。

日本国内だけを回るクルーズでも船の電波につながりますか?

つながることがあります。ソフトバンクは、日本周遊のクルーズでも公海を航行すると船内ケータイの対象になる場合があると案内しています。ドコモも、沿岸や船の上では国際ローミングなどの料金がかかるおそれがあると注意しています。国内のクルーズでも、海の上では機内モードとWi-Fiの組み合わせが安全です。

旅行用eSIMは航海中も使えますか?

旅行用eSIMは、寄港する国の陸上の電波で使うものとして準備してください。航海中は機内モードにして船内Wi-Fiを使い、寄港先の通信事業者の名前が表示されてからeSIMで通信を始めるのが安全です。

クルーズのネットは「海の上は船内Wi-Fi、港ではeSIM」と決めておけば迷わない

クルーズ船のWi-FiはStarlinkなどの衛星回線で以前より使いやすくなりましたが、船全体で共有する回線で、公式にもオンライン会議には向かないとされています。一方、海の上で入る携帯電波は、領海の外で動く船舶用のネットワークで、料金はふだんの定額プランとは別のローミング扱いです。日本一周のクルーズでも公海に出ればつながり得ます。航海中は機内モードにしてWi-Fiだけを使い、寄港地では出発前に入れておいた旅行用eSIMに切り替える。この使い分けを乗船前に決めておけば、通信で慌てることはありません。

寄港する国に合うプランはCoral eSIMのプラン一覧から選べます。

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