結論: 海外eSIMの使い方でつまずくのは、QRコードを読み込む場面ではありません。開通した後に日本の主回線が動いたままになっていること、そして容量が何に減らされているかを把握していないことです。出発前に決めるべきスイッチは「主回線の着信」「データ通信に使う回線」「データローミング」「モバイルデータ通信の切替を許可」「Wi-Fiアシスト」の5つで、いずれも端末の設定画面だけで完結します。
海外eSIMの使い方は開通後に差がつく
eSIMのインストールは、プロファイルを追加した時点で終わりではありません。追加されたのは「回線が1本増えた」という状態であり、どちらの回線で通信し、どちらの回線で電話を受けるかは端末側の設定として別に残ります。ここが未設定のまま出国すると、現地でeSIMがつながっているにもかかわらず、日本の主回線を経由した通信や着信が並行して動きます。
Appleは、デュアルSIMの状態でモバイルデータ通信に使えるのは同時に1回線だけだと説明しています。つまり、eSIMを入れた瞬間にデータ通信がeSIM側へ移るわけではなく、どちらを使うかは利用者が指定する必要があるということです。開通手順そのものは海外用eSIMの設定手順で扱っているので、この記事は開通した後だけを見ていきます。
主回線を残したまま渡航すると着信で課金される
見落とされやすいのが音声側です。NTTドコモは海外での利用料金について「海外では電話を受ける場合も通話料が発生します」と明記しています。日本国内の感覚では着信は無料ですが、海外ローミング中は着信側にも料金が発生するという扱いになります。データローミングをオフにしていても、これは音声の話なので防げません。
対策は難しくありません。日本の番号での着信が不要な期間なら、その回線の「この回線をオンにする」をオフにします。着信は必要だが料金は避けたい場合は、留守番電話へ直接転送する設定を出国前に済ませておく方法があります。いずれも渡航中に思い出しても間に合わないので、出発前の作業に含めてください。番号を維持したまま海外eSIMを使う考え方は旅行中のデュアルSIM設定にまとめてあります。
データ通信の回線をeSIM側に固定する
データ通信に使う回線の指定は、iPhoneでは設定のモバイル通信からモバイルデータ通信を選び、渡航先で使うeSIMの回線名を選択します。ここを日本の主回線のままにしていると、eSIMが有効でも通信は主回線側を通り、ローミングの経路に乗ります。
あわせて、日本の主回線側のデータローミングは必ずオフにします。Appleは、通信事業者のネットワーク圏外ではデータローミングによってモバイルデータ通信ネットワーク経由でインターネットにアクセスできる状態になるため、旅行中はこれをオフにすることでローミングによる請求を回避できると案内しています。海外eSIM側のデータローミングは、逆にオンが必要になる場合があります。多くの旅行用eSIMは現地事業者のネットワークにローミング接続する形で提供されるためです。主回線はオフ、eSIMはオンという非対称な組み合わせになる、と覚えておくと迷いません。
「モバイルデータ通信の切替を許可」が主回線を呼び戻す
ここまで正しく設定していても、通話中だけデータ回線が入れ替わる経路が残っています。Appleは「モバイルデータ通信の切替を許可」について、有効にすると音声専用の回線が通話中に音声とデータの両方を使う回線に切り替わり、その切り替えは通話の間だけ続くと説明しています。
渡航中にこれが有効だと、日本の主回線で電話をした瞬間にデータ通信までそちらへ寄る、という動きが起こり得ます。設定のモバイル通信からモバイルデータ通信を開き、この項目をオフにしておくのが確実です。渡航前に一度で確認しておきたい端末設定は海外に行く前のスマホ設定に一覧があります。
eSIMの容量は何を見るかで決まる
容量が足りるかどうかの見積もりは、日数ではなく用途で決まります。実際の数値を公式が公表しているサービスで確認すると、幅の大きさがはっきりします。
Netflixはモバイルでのデータ使用量設定として、自動なら1GBあたり約4時間、データ使用量を少に設定すれば約6時間視聴できるとしています。一方で、データ使用量:多に設定した場合は、端末と接続速度によっては視聴時間20分あたりのデータ使用量が1GB以上になる場合があるとしています。同じ1本の映画でも、設定次第で消費量は十数倍動きます。
つまり、旅行用eSIMで容量が持つかどうかは契約したギガ数だけでは決まりません。動画配信アプリの画質設定を出発前に一段下げておくだけで、必要な容量の前提が変わります。地図についても、現地で毎回読み込むのではなく事前にダウンロードしておく方法があり、オフラインマップの使い方で扱っています。
Wi-Fiアシストは既定でオンになっている
もう一つ、意識されないまま容量を減らす設定があります。AppleはWi-Fiアシストについて、デフォルトでオンになっており、Wi-Fiの接続状況が悪いときに自動的にモバイルデータ通信へ切り替えて信号を増強すると説明しています。そのうえで、使用されるモバイルデータ量が増えることがあり、データプランによっては追加料金がかかることがあるとしています。
海外のホテルや空港のWi-Fiは、つながってはいるが実効速度が出ないという状態になりがちです。この状況はWi-Fiアシストが最も働く条件と重なります。Wi-Fiに接続しているつもりでeSIMの容量が減っていく場合、まずここを疑ってください。設定のモバイル通信を一番下までスクロールすると項目があります。
バックグラウンドの通信を止める
Appleは省データモードについて、有効にするとiPhoneがWi-Fiに接続されていないときに自動アップデートとバックグラウンドタスクが一時停止すると説明しています。旅行中は写真のクラウド同期やアプリの自動更新といった、その場で必要でない通信が容量を消費しがちです。渡航期間だけ省データモードにしておくのが単純で確実です。
eSIMの残量は端末の数字で管理する
多くの旅行用eSIMは、残量の確認手段が事業者のアプリやマイページに限られます。そこで併用したいのが端末側の統計です。
iPhoneでは、設定のモバイル通信でアプリごとのモバイルデータ通信使用量を確認できます。デュアルSIMの場合は、選択したモバイルデータ通信の番号で使用した量が表示されます。ただしこの数字は自動ではリセットされないため、Appleが案内しているとおり、一番下の統計情報をリセットを渡航直前に実行しておく必要があります。出発前にリセットしておけば、その後の表示がそのまま旅行中の消費量になります。
Androidでは、さらに踏み込んだ制御ができます。Googleは、データ使用量の警告と制限のメニューでデータ警告を設定できること、そしてデータ上限を設定した場合は上限に達した時点でモバイルデータ通信が自動的にオフになり、通知が表示されて手動で再度オンにする必要があることを説明しています。契約した容量に少し余裕を持たせた値を上限に設定しておけば、使い切る前に必ず止まります。
通信が遅いと感じたときの切り分け
残量が残っているのに遅い場合は、容量の問題ではなく接続先の問題であることが多いです。eSIM側の回線がどのネットワークにつながっているか、データローミングがオンになっているか、機内モードの入り切りで再接続するかを順に確認します。原因の切り分けは海外eSIMの通信が遅いときで詳しく扱っています。
FAQ
海外eSIMを入れたら日本の主回線は削除すべきですか
削除する必要はありません。削除すると帰国後に再設定が必要になります。渡航中はその回線をオフにする、またはデータローミングをオフにするだけで十分です。着信も不要であれば回線自体をオフにしてください。
データローミングは結局オンとオフのどちらにすればいいですか
回線ごとに分けて考えます。日本の主回線はオフ、渡航先で使う海外eSIM側はオンにするのが基本です。旅行用eSIMは現地事業者のネットワークにローミング接続して提供されることが多く、eSIM側までオフにするとつながりません。
Wi-Fiにつないでいるのにデータが減るのはなぜですか
Wi-Fiアシストが働いている可能性が高いです。Appleはこの機能が既定でオンであり、Wi-Fiの接続状況が悪いときに自動的にモバイルデータ通信へ切り替えるため、使用されるモバイルデータ量が増えることがあると説明しています。設定のモバイル通信の最下部でオフにできます。
何ギガのeSIMを選べばいいか判断できません
日数ではなく用途で決めます。地図と検索とメッセージが中心なら小容量で足ります。動画を見るなら画質設定が支配的で、Netflixの公式値では自動設定で1GBあたり約4時間、高画質側に振ると20分あたり1GB以上になる場合があります。出発前に画質を一段下げておくと前提が変わります。
旅行が終わったeSIMはそのままにしていても大丈夫ですか
期限切れのプロファイルが残っていても通信料は発生しませんが、回線一覧が増えて主回線の選択を誤りやすくなります。次の渡航前に整理しておくのが安全です。手順は旅行後のeSIM削除にあります。
海外eSIMの実力は、開通後の5分で決まる
ここまで挙げた設定は、いずれも端末の設定画面で完結し、合計しても数分で終わります。それでも効果が大きいのは、放置したときに失われるものが「気づかないうちの通信料」と「気づかないうちの残量」だからです。どちらも現地で気づいた時点では取り返しがつきません。出発前に、主回線の着信、データ通信に使う回線、データローミング、モバイルデータ通信の切替を許可、Wi-Fiアシストの5つを順に確認してください。渡航先に合ったプランはCoral eSIMのプラン一覧から選べます。
